樹齢250年を超える奇蹟の大樹。
池田町の紅葉のシンボルとして親しまれている大峰高原七色大カエデについて見ていきたいと思います。
大カエデは標高1000mの大峰高原の入り口に立っており、赤や黄に色づいた葉と、色づく前の緑の葉が混在して楽しめることから「七色大カエデ」と呼ばれています。
毎年数万人が訪れる人気スポットで、2012年には5万人を超える観光客を集めたといいます。
過去に写真に収めていましたので、それと比較しながら追ってみたいと思います。
もう木も高齢なためか、年々樹勢も落ちているのが分かります。
なぜ「奇蹟の大樹」と呼ばれるのでしょうか?
大カエデが見つかったのは1947年(昭和22年)春の開拓事業でのことです。
終戦直後、食糧難を打開するために、大峰高原に開拓団の人々がやってきました。
少しでも多くの農産物を作るため、木を伐採してあたり一面を畑にする開墾が行われました。
ところが、大きく育ったこの大樹だけは根まで掘り起こすことができず、根から幹1mを残して丸坊主にし、切り株だけを残したのです。
人々は、水利のないこの地での畑作をあきらめて去り、この地は再び人の目に触れることはなかったのです。
時は流れて1968年(昭和43年)。大峰牧場ができ、近隣に道を整備しようとした際に、切り株から枝幹が伸び、大きく成長した盆栽のようにこんもりと盛り上がった大カエデが見つかったのです。
その後、大雪や大風などで周りの木がなぎ倒されることがあっても、この大樹は現在もここに立っているのです。
海抜1000mに位置し、フォッサマグナが下を通り、豊饒な火山灰地と少しくぼんだこの地形が根に栄養素を集める形となって、山もみじとしては奇蹟的な大樹に成長したのです。
大カエデは江戸時代からこの場に立っていたとされています。
高さは11m、四方八方に伸びた枝先の直径は15m、幹周りは3mもあります。
七色大カエデの紅葉は10月上旬頃から色づきはじめ、見頃を迎えるのは10月中旬~下旬頃です。
緑色に赤や黄色、オレンジなど、1本の木の枝がさまざまな色彩に染め上げられ、美しいグラデーションを生み出します。まさに七色を身にまとったカエデになり、「七色大カエデ」の名前の由来です。
見る位置、見る時間によっても色合いが変わり、紅葉が終わりを迎えるころには一面の赤に染まります。
NHKの朝の連続テレビ小説「おひさま」のロケ地になりました(第2話で登場)。
遠足シーンで登場しました。
NHK Eテレ(教育テレビ)の番組「いないいないばあっ!」の中で、季節ごとの素敵なカエデの木の映像とともに流れている「カエデの木のうた」のモデルにもなっています。
曲もとてもいい歌で、登場するカエデの木も、1年かけて定点撮影された美しい映像です。
映画「神様のカルテ」(櫻井翔・宮崎あおい主演) のエンドロールで、美しく紅葉しているシーンで登場します。
大カエデの近くにアズキナシの木があります。
1981年に松田聖子が主演した映画「野菊の墓」(監督:澤井信一郎)の撮影で使われたことから、「聖子ちゃんの木」と呼ばれています。
(右) <参考>映画の1シーン:嫁に行く民子(松田聖子)、遠くに有明山が見える
大カエデから約2kmほど行ったところにある「大峰高原白樺の森」に「中カエデ」があります。
七色大カエデが散り終わる頃、大カエデより約1ヶ月遅く紅葉が見頃になります(11月中旬から下旬)。
少し小ぶりですが、こちらもきれいに色づきます。
大カエデの近くの東側斜面下に「新カエデ」があります。
2008年に発見されました。
以前は案内板もあったようですが、急な斜面下にあり危険性もあるためか撤去されていて、案内も消極的でした。
こちらも大カエデが散り終わる頃、紅葉を迎えます。
■ 大カエデの周りには、小さいながらも紅葉のきれいな木々が見学者の関心を集めていました。高齢な大カエデをサポートするかのような、新たにつながっていく命を感ぜずにはいられません。
この広場で、自然界と人間との数多くのドラマが誕生したことを、大カエデは長い間見てきたことでしょう。
人々も大カエデに問いかけ、そして今日を生きる元気を大カエデからもらっています。
今日も青空が広がっていました。